中古マンションや中古戸建ての見積書を受け取って、「登記費用 420,000円」という行に手が止まった——。そんな経験はありませんか。
仲介手数料や火災保険なら、まだ中身が想像できます。でも登記費用だけは、何にいくら使われているのかが見えません。しかもこの費用、条件を満たしているのに書類を1枚取らなかっただけで、20万円以上も変わることがあります。
私は宅建士・FP2級として、不動産の売買に関わるお金の相談を受けています。登記費用は「司法書士さんにお任せ」で終わらせてしまう方がほとんどですが、中身を知っている人だけが得をするのがこの費用の怖いところです。
この記事では、中古住宅を購入するときの登記費用について、①本則の税率 ②住宅用家屋の軽減税率 ③軽減を受けるための条件の3つのポイントに絞って解説します。
登記費用は「税金」と「報酬」の二階建て
まず大前提から。見積書に「登記費用」と一括で書かれている金額は、性質のまったく違う2つのお金が合算されたものです。
- ① 登録免許税=国に納める税金。税率は法律で決まっている
- ② 司法書士への報酬=手続きを代行してもらう対価。事務所ごとに金額が違う
②の報酬には全国一律の基準がありません。事務所が自由に決められるので、見積りを比べる意味があります。一方①の登録免許税は、誰に頼んでも金額は同じです。ただし、軽減措置を使うか使わないかで金額が大きく変わります。
だからこそ、見積書を受け取ったら「税金と報酬の内訳を分けて教えてください」と聞くのが第一歩です。ここを分けずに「登記費用一式」で受け取ってしまうと、軽減が使われているのかどうかすら分かりません。

計算のもとは「売買代金」ではない
もうひとつ、最初に押さえておきたい勘違いがあります。
登録免許税の計算のもとになるのは、買った金額(売買代金)ではなく、固定資産税評価額です(登録免許税法10条1項、同法附則7条)。
固定資産税評価額は、市町村(東京23区は都)が決めている価格で、一般に売買価格より低めになります。3,000万円で買ったマンションの評価額が1,500万円台、ということも珍しくありません。
この評価額は、固定資産評価証明書で確認できます。売主さんが持っていることも多いですし、物件所在地の市区町村で取得することもできます。見積りの根拠を確かめたいときは、この証明書の数字と照らし合わせてください。
なお、計算した課税標準は1,000円未満を切り捨て、算出した税額は100円未満を切り捨てます。

ポイント① 軽減を使わない「本則」の税率
では本題です。まずは軽減措置をいっさい使わなかった場合の税率を見ます。これが登録免許税法の原則(本則)で、別表第一に定められています。
- 土地の所有権移転登記(売買) … 不動産の価額の2.0%(1000分の20)
- 建物の所有権移転登記(売買) … 不動産の価額の2.0%(1000分の20)
- 抵当権の設定登記(住宅ローン) … 債権金額の0.4%(1000分の4)
土地も建物も2.0%です。評価額が合計1,500万円なら、それだけで30万円。ここに住宅ローンの抵当権設定が加わります。
「思ったより高い」と感じたはずです。この本則の数字こそが、軽減措置を使えなかったときに実際に請求される金額です。

ポイント② 住宅なら税率は最大6分の1以下になる
ここからが本題です。マイホームとして購入する場合、租税特別措置法によって税率が大きく下がります。
土地の移転登記 2.0% → 1.5%
土地の売買による所有権移転登記は、1.5%(1000分の15)に軽減されます(租税特別措置法72条1項1号)。
これは住宅でなくても、土地の売買であれば使えるのが特徴です。しかも令和8年度の税制改正で適用期限が3年延長され、令和11年3月31日まで使えるようになりました。
建物の移転登記 2.0% → 0.3%
ここが一番大きいところです。一定の要件を満たす住宅(=住宅用家屋)の所有権移転登記は、0.3%(1000分の3)まで下がります(租税特別措置法73条)。
2.0%が0.3%ですから、約6.7分の1。評価額700万円の建物なら、14万円が2万1,000円になる計算です。
抵当権の設定登記 0.4% → 0.1%
住宅ローンを組んで住宅用家屋を取得する場合、抵当権設定登記も0.1%(1000分の1)に軽減されます(租税特別措置法75条)。3,000万円の借入なら、12万円が3万円です。
なお、新築を建てたときの所有権保存登記は0.4%→0.15%(租税特別措置法72条の2)。これら住宅用家屋の特例は、いずれも令和9年3月31日までの措置です。
ポイント③ 軽減を受けるには4つの条件がある
ここまで読んで「自動で安くなるのだろう」と思った方は要注意です。建物の軽減(0.3%)には、4つの関門があります(租税特別措置法73条、同法施行令41条・42条)。
条件① 床面積が50平方メートル以上
これが第一関門です。マンションの場合は登記簿上の専有部分の床面積で判定します。
気をつけたいのは、パンフレットの面積(壁芯)と登記簿の面積(内法)が違うこと。マンションは登記簿の面積のほうが小さく出るため、パンフレットで51平米でも、登記簿では49平米台ということが起こります。50平米前後の物件を検討している方は、必ず登記簿謄本で確認してください。
条件② 自分が住むための家であること
この特例は自己の居住用が前提です。投資用のワンルームや、別荘・セカンドハウスには使えません。
条件③ 取得後1年以内に登記すること
取得してから1年以内に登記を受けるものに限られます。通常の売買なら決済と同時に登記するので問題になりませんが、事情があって登記を先延ばしにしていた場合は期限に注意です。
条件④ 【中古だけ】新耐震基準に適合していること
中古住宅にだけ課される条件です。建築基準法施行令の規定などに適合しているか、または昭和57年1月1日以後に建築された家屋であることが必要です(租税特別措置法施行令42条1項2号)。
実務上は「登記簿の建築年月日が昭和57年1月1日以後かどうか」がひとつの分かれ目になります。それより古い物件でも、耐震基準適合証明書などで適合が証明できれば軽減は使えますが、取得に時間と費用がかかります。昭和56年以前の物件を検討しているなら、契約前に確認しておくべきポイントです。
あわせて注意:原因は「売買」または「競落」に限られる
見落とされがちですが、建物の軽減が使えるのは売買または競落による取得だけです(租税特別措置法施行令42条3項)。親からの贈与や、不動産の交換では使えません。「実家をもらうことになった」というケースでは、この軽減は使えないと考えてください。
手続きは「住宅用家屋証明書」
これらの条件を満たしていることは、物件所在地の市区町村長が証明します。この証明書が住宅用家屋証明書です。登記申請のときに添付して、はじめて軽減税率が適用されます。
通常は司法書士が取得してくれますが、「住宅用家屋証明書は取ってもらえますか」と一言確認しておくだけで、取り違えを防げます。
実際に計算してみる:差額は約25万円
数字で比べてみましょう。次のような中古マンションを購入したケースです。
- 土地(敷地権)の固定資産税評価額 800万円
- 建物の固定資産税評価額 700万円
- 住宅ローンの借入額 3,000万円
【軽減を使えなかった場合】
- 土地の移転登記 800万円 × 2.0% = 16万円
- 建物の移転登記 700万円 × 2.0% = 14万円
- 抵当権の設定 3,000万円 × 0.4% = 12万円
- 合計 42万円
【軽減をすべて使えた場合】
- 土地の移転登記 800万円 × 1.5% = 12万円
- 建物の移転登記 700万円 × 0.3% = 2万1,000円
- 抵当権の設定 3,000万円 × 0.1% = 3万円
- 合計 17万1,000円
その差、24万9,000円。これに司法書士報酬が加わりますが、報酬部分は軽減のあるなしで変わりません。つまり、この約25万円はまるごと「書類1枚の差」です。
ちなみに、いま住んでいる家を売って住み替える方は、売却価格の見込みが立たないと購入の資金計画が組めません。私も自宅の相談を受けるときは、まず査定額のレンジを掴むところから始めています。無料で複数社の査定が比較できるので、住み替えを考え始めた段階で一度出してみる価値があります。
宅建試験を受ける方へ:ここは「税・その他」の頻出論点
ここまでの内容は、そのまま宅建試験の「税・その他」の出題範囲です。特に狙われるのは次の3点。
- 課税標準は固定資産税評価額(売買代金ではない)
- 住宅用家屋の軽減は「自己居住用・50平方メートル以上・1年以内の登記」
- 軽減が使える原因は売買と競落だけ(贈与・交換は対象外)
「土地の1.5%」と「住宅用家屋の0.3%」を混ぜないこと、そして保存登記(0.15%)と移転登記(0.3%)を取り違えないこと。ここさえ整理できていれば、登録免許税の問題は得点源になります。
※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。
まとめ
中古住宅の購入でかかる登記費用について、3つのポイントを振り返ります。
- ポイント① 本則の税率は土地2.0%・建物2.0%・抵当権0.4%。計算のもとは売買代金ではなく固定資産税評価額
- ポイント② マイホームなら土地1.5%・建物0.3%・抵当権0.1%まで下がる(土地は令和11年3月31日まで、住宅用家屋は令和9年3月31日まで)
- ポイント③ 建物の軽減には50平方メートル以上・自己居住用・1年以内の登記・昭和57年1月1日以後の建築の4条件。証明するのは住宅用家屋証明書
やることは難しくありません。見積書を受け取ったら「税金と報酬の内訳」を聞き、「住宅用家屋証明書は取りますか」と確認する。この2つだけです。
それだけで、数十万円が変わることがあります。
「自分の物件だと登記費用はいくらになるのか」「この予算で本当に買えるのか」が分からないという方は、宅建士・FP2級の私が ココナラの【住宅ローン本音相談】 で相談に乗っています。気になる方はぜひ。
※本記事は令和8年9月時点の法令にもとづく一般的な解説です。個別の適用可否は、物件所在地の市区町村や、依頼する司法書士にご確認ください。
