賃貸の家賃、値上げを言われたら?|更新前にあわてない3つのポイント|宅建士が解説

不動産経営
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ある日ポストに入っていた、管理会社からの1枚のお知らせ。「次回更新時より、家賃を月5,000円改定させていただきます」。読んだ瞬間、胸がざわっとした方もいるのではないでしょうか。

「断ったら追い出される?」「サインしないとダメ?」と、ひとりで不安を抱えてしまいがちです。でも、家賃の値上げは「決定のお知らせ」ではなく、法律上は「相談のはじまり」です。

私自身、宅建試験に4回落ちて5回目で合格するまで、借地借家法は「条文を丸暗記する科目」でした。けれど鳶の仕事で現場を回り、不動産の世界に関わるようになってから、この法律が「借りて住む人の暮らしを守るためのルール」だと実感するようになりました。

今日は、借地借家法などの条文を確かめたうえで、家賃の値上げを言われたときにあわてないための3つのポイントを紹介します。

家賃の値上げは「お願い」で、合意するまで決まらない

家賃の値上げについては、借地借家法32条に決まりがあります。大家さんは、次のような事情で今の家賃が「不相当」になったとき、家賃の増額を請求できます。

  • 土地や建物にかかる税金などの負担が増えた
  • 土地や建物の価格の上昇や、その他の経済事情の変動があった
  • 近くの同じような物件の家賃と比べて安すぎる

ここで大事なのは、これは「請求できる」という決まりであって、借りている人が合意するか、最終的に裁判で決まるまでは、新しい家賃は確定しないということです。お知らせの紙が届いた時点で、自動的に家賃が上がるわけではありません。

逆に、借りている側が「近所より高すぎる」と思えば、同じ32条で減額を請求することもできます。家賃は、貸す人と借りる人が話し合って決めるもの。この前提を知っておくだけで、気持ちはずいぶん落ち着きます。

ずんだもんと四国めたんが間取り図を覗き込んで相談している

家賃の値上げであわてない3つのポイント

ポイント①|サインする前に「値上げの理由」を聞いてみる

更新の書類に新しい家賃が書かれていて、そこにサインをすれば、それは値上げに合意したことになります。だからこそ、サインの前に一度立ち止まりましょう。

聞くことはシンプルで、「どんな理由で、なぜこの金額なのか」です。先ほどの3つの事情(税金などの負担・経済事情の変動・近くの家賃との比較)のどれにあたるのかを、管理会社に確認してみてください。理由を聞くこと自体は、失礼なことではありません。

また、契約書もあわせて確認しましょう。

  • 「一定の期間は家賃を上げない」という特約があれば、その期間は特約が優先されます(32条1項ただし書)
  • 反対に、定期借家契約で「家賃の改定に関する特約」がある場合は、32条は使われず、その特約どおりになります(38条9項)

「知らなかった」ではなく「確認してからサインする」。それだけで、値上げの話し合いは対等になります。

私が建築の現場で学んだのは、「図面を確認しないまま工事を進めると、後から直すほうがずっと大変」ということでした。契約も同じで、サインの前の数分の確認が、その後の何年分もの家賃を左右します。

ポイント②|話がまとまるまで「今までの家賃」は払い続ける

値上げに納得できないとき、絶対にやってはいけないのが家賃を払わないことです。

借地借家法32条2項では、値上げの話し合いがまとまらない間、借りている人は「自分が相当だと考える額」を払えば足りるとされています。多くの場合は、今までの家賃をこれまでどおり払い続ける形になります。

ただし、注意点が1つあります。のちに裁判で「値上げは正当」と決まった場合、払ってきた額との差額に年1割の利息をつけて支払う必要があります(32条2項ただし書)。「払わなくていい」のではなく、「決まるまでは今の額でよい」という意味だと理解しておきましょう。

もし大家さんが「新しい金額でなければ受け取らない」と言ってきたら、法務局に家賃を預ける「供託」という方法があります(民法494条)。受け取りを拒まれたまま放っておくと滞納と同じ状態になりかねないので、供託で「払う意思がある」ことを形に残します。

値上げに反対しても、家賃を止めてはいけない。ここだけは必ず守ってください。

ポイント③|話し合いでまとまらなければ「調停」がある

当事者同士の話し合いで決着しないとき、大家さんがいきなり裁判を起こせるわけではありません。家賃の増減の争いは、まず調停を申し立てる決まりになっています(民事調停法24条の2・調停前置)。

調停は、裁判所で調停委員が間に入って話し合う手続きで、建物の所在地を管轄する簡易裁判所などで行われます。勝ち負けを決める場ではなく、お互いが納得できる金額を探す場です。

また、「値上げに応じないなら更新しない」と言われることもあるかもしれません。けれど、大家さん側から更新を拒んだり解約を申し入れたりするには、借地借家法28条の「正当の事由」が必要です(定期借家契約は別です)。値上げに応じないことだけで、すぐに出ていかなければならないわけではありません。

ずんだもんと四国めたんが二人でガッツポーズをしている

今日からできる具体アクション

お知らせが届いたら、次の順番で動いてみてください。

  1. 契約書を出して確認する:普通借家か定期借家か、家賃の特約があるか
  2. まわりの家賃を調べる:同じ駅・同じくらいの広さ・同じくらいの築年数の募集家賃を、賃貸サイトで5〜10件メモする
  3. 管理会社に理由を聞く:電話でもよいですが、やりとりはメールなど記録に残る形が安心です
  4. 落としどころを考える:「全額は難しいが半分なら」「次の更新までは据え置きで」など、自分の希望を言葉にしておく

調べてみて、今の部屋の家賃が相場より明らかに高くなるなら、思い切って住み替えを考えるのも1つの選択肢です。

同じ家賃を払うなら、条件のいい部屋に移るという考え方もあります。まずは近くの相場を見てみるだけでも、判断の材料になります。

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四国めたんが説明し、ずんだもんがうなずいて聞いている

まとめ|値上げのお知らせは「話し合いの入り口」

  • 家賃の値上げは請求であって、合意か裁判で決まるまでは確定しない(借地借家法32条1項)
  • サインの前に理由と契約書の特約を確認する
  • 話がまとまるまでは今までの家賃を払い続ける。受け取りを拒まれたら供託(32条2項・民法494条)
  • まとまらなければ調停で話し合う(民事調停法24条の2)

家賃は「言われたら従うもの」ではなく、「話し合って決めるもの」。あわてずに、まずは契約書を開くところから始めてみてください。

個別の事情によって判断が変わることもあります。話し合いが難しいと感じたら、お住まいの自治体の法律相談や、法テラスなどの公的な相談窓口も利用してみてください。

※本記事は令和8年10月時点の法令にもとづく一般的な解説です。個別の事情については、弁護士や公的な相談窓口にご確認ください。

出典:e-Gov法令検索「借地借家法」第28条・第32条・第38条/「民事調停法」第24条の2/「民法」第494条

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