不動産会社の求人票を見ていると、かなりの確率で目にするのが「試用期間3か月あり」という一文です。読み流してしまいがちですが、内定が近づくにつれて「試用期間中にクビになったらどうしよう」「給料は下がるの?」と、急に気になってくる方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、試用期間は「お試しだから何でもあり」の期間ではなく、最初から正式な労働契約が始まっている期間です。ただし、給料や扱いが本採用後と違うことはあるので、入社前に確認しておくと安心です。
私自身、宅建試験に4回落ちて5回目で合格し、鳶の現場から不動産の世界に関わるようになりました。転職の相談を受けていると、「試用期間のことを聞いたら印象が悪くなりそうで聞けなかった」という声をよく耳にします。でも、ここは遠慮せずに確認していいところです。
今日は、労働基準法などの条文を確かめたうえで、不動産会社への転職で「試用期間あり」と書かれていたときに、入社前に確認しておきたい3つのことを紹介します。
試用期間は「お試し」ではなく、すでに正式な契約
試用期間について、労働基準法に「何か月まで」という長さの決まりはありません。多くの会社は就業規則で「3か月」「6か月」などと決めています。
では、試用期間中の立場はどうなっているのか。これについては有名な最高裁の判決(三菱樹脂事件・昭和48年12月12日)があり、試用期間中も期間の定めのない労働契約はすでに成立していると考えられています。そのうえで、会社には「適格性がないとわかったときに契約を解約できる権利」が残されている、という整理です(解約権留保付労働契約と呼ばれます)。
つまり、試用期間中のあなたは「仮の社員」ではなく、労働基準法などのルールに守られた、れっきとした従業員です。この前提を知っておくだけで、確認すべきポイントがぐっと見えやすくなります。

入社前に確認する3つのこと
確認①|試用期間の「長さ」と「その間の給料」
まず確認したいのは、試用期間が何か月なのか、そしてその間の給料や手当が本採用後と同じなのかです。
実は、試用期間は求人の段階で明示すべき項目の1つです。職業安定法5条の3と同法施行規則4条の2第3項で、求人や募集のときに示す労働条件として「試みの使用期間に関する事項」がはっきり挙げられています。求人票に書かれていなければ、面接や内定の段階で聞いてかまいません。
不動産会社では、試用期間中は基本給が低めだったり、資格手当や歩合の扱いが違ったりすることがあります。ここで知っておきたいのが最低賃金のルールです。試用期間中だからといって、会社が勝手に最低賃金を下回る給料にすることはできません。最低賃金法7条では、試用期間中の人について最低賃金を減らせるのは、会社が都道府県労働局長の許可を受けた場合に限られています。
確認するときは、次の3点をメモしておくと安心です。
- 試用期間は何か月か(延長されることはあるか)
- 試用期間中の基本給・手当(宅建の資格手当を含む)は本採用後と同じか
- 歩合がある会社なら、試用期間中も歩合の対象になるか
内定が出たら、届いた労働条件通知書と求人票を並べて読み比べましょう。読み比べ方は求人票の給与欄で損しない3つのチェックの記事でも詳しく書いています。
確認②|試用期間中でも「かんたんにクビ」にはできない
「試用期間中なら、会社はいつでも辞めさせられる」と思っている方は少なくありません。でも、これは誤解です。
先ほどの最高裁の判決では、試用期間中の解約は本採用後より広く認められるとしつつも、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限られるとされています。労働契約法16条も、合理的な理由のない解雇は無効だと定めています。
さらに、労働基準法には解雇の予告のルールがあります。
- 会社が解雇するときは、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払う必要がある(労働基準法20条)
- 試用期間中の人はこのルールの例外になるが、14日を超えて働いた時点で例外ではなくなる(労働基準法21条4号)
つまり、入社して15日目以降は、試用期間中でも30日前の予告か予告手当が必要ということです。もちろん、遅刻や無断欠勤が続くなど本人に原因がある場合は話が別です。まずは社会人として当たり前のことを丁寧に続けることが、いちばんの安心材料になります。
とはいえ、「この会社の試用期間の運用は大丈夫かな」と自分ひとりで見極めるのは難しいものです。私自身、当時これを知っていたらもっと早く動けていました。不動産・宅建に特化した宅建Jobエージェント
のような専門のエージェントなら、試用期間の長さやその間の給与条件を、求人ごとに確認したうえで教えてもらえます。無料で使えるので、今日の一歩として登録だけしておく価値はあります。
確認③|社会保険と有給休暇は「入社日」から数える
3つ目は、意外と見落としがちな社会保険と有給休暇です。
健康保険や厚生年金は、試用期間中でも、加入の条件を満たしていれば入社日から加入するのが原則です。「本採用になってから加入します」と言われたら、一度確認したほうがいいサインです。社会保険の適用は、先ほどの職業安定法施行規則でも、求人のときに示すべき項目に入っています。
有給休暇も同じです。労働基準法39条では、雇入れの日から6か月続けて働き、8割以上出勤した人に10日の有給休暇を与えると決めています。この「雇入れの日」は入社日のことで、試用期間も6か月のカウントに含まれます。試用期間が終わってから数え始めるわけではありません。
なお、宅建業の会社では、試用期間中であっても従業者として名簿に載り、従業者証明書を持って仕事をすることになります。入社直後に確認したいことは「従業者証明書」の記事にまとめています。

宅建を持っているあなたは「聞いていい立場」
試用期間のことを面接で聞くのは、決して失礼なことではありません。「試用期間は何か月で、その間の給与や手当は本採用後と同じですか?」と、事実を確認するだけで十分です。
宅建士は、不動産会社にとって法律で一定の人数を置かなければならない大切な人材です。だからこそ、条件をきちんと確かめてから入社を決めていい。納得して入った会社のほうが、試用期間も前向きに過ごせます。
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まとめ|「試用期間あり」は入社前の確認で安心に変わる
- 試用期間中も正式な労働契約はすでに成立している(三菱樹脂事件・最高裁昭和48年12月12日)
- 確認①:試用期間の長さとその間の給料。求人のときに明示すべき項目で、最低賃金を下回るには労働局長の許可が必要(職業安定法施行規則4条の2・最低賃金法7条)
- 確認②:試用期間でもかんたんにクビにはできない。14日を超えたら30日前の予告か予告手当が必要(労働基準法20条・21条、労働契約法16条)
- 確認③:社会保険と有給休暇は入社日から。有給の6か月には試用期間も含まれる(労働基準法39条)
試用期間は「試される期間」であると同時に、あなたが会社を確かめる期間でもあります。入社前の小さな確認が、転職後の安心につながります。
個別の事情によって判断が変わることもあります。試用期間中の扱いで困ったときは、お近くの労働基準監督署や都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど、公的な相談窓口も利用してみてください。
※本記事は令和8年10月時点の法令にもとづく一般的な解説です。個別の事情については、専門家や公的な相談窓口にご確認ください。
出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第20条・第21条・第39条/「労働契約法」第16条/「最低賃金法」第7条/「職業安定法施行規則」第4条の2/最高裁判所大法廷 昭和48年12月12日判決(三菱樹脂事件)
