宅建の転職、求人票の「月給30万円」は本当?|給与欄で損しない3つのチェック|宅建士が解説

不動産経営
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「未経験歓迎・月給30万円〜」。宅建に合格して不動産業界の求人を見はじめると、こういう文字が目に飛び込んできます。今の給料より高い。資格を取ってよかった——そう思った瞬間に、いちばん確認すべきところを飛ばしてしまう人がとても多いです。

結論から言うと、求人票の「月給◯◯万円」は、そのまま毎月手にできる基本給とは限りません。中に何が入っているかで、同じ30万円でも中身はまったく別物になります。

しかも、それを見抜くための情報は法律で「求人票に書きなさい」と決められているので、ちゃんと読めば入社前に気づけます。逆に言えば、読まずに入ると、入社後に「聞いていた話と違う」となっても取り返しがつきません。

この記事では、宅建士の立場から、転職で求人票の給与欄を見るときの3つのチェックを、条文と国のルールをもとに整理します。

チェック① 「固定残業代」が何時間分入っているか

最初に見るのは、月給の中に固定残業代が含まれていないか、です。「みなし残業」「営業手当(時間外手当含む)」といった書き方もされます。

固定残業代とは、決まった時間分の残業代を、実際に残業したかどうかに関係なく毎月先に払う仕組みです。残業が少ない月でももらえるので、それ自体が悪いわけではありません。問題は、その分だけ基本給が低く設定されていることに気づかないまま入社してしまうことです。

同じ「月給30万円」でもこれだけ違う

求人票の書き方 基本給 残業45時間した月
月給30万円(固定残業代なし) 30万円 30万円+残業代が別途
月給30万円(うち固定残業代8万円・45時間分) 22万円 30万円のまま

金額は同じ30万円でも、基本給は8万円も違います。基本給が効いてくるのは残業代だけではありません。賞与や退職金を「基本給の◯か月分」で決めている会社では、そこにもそのまま響きます。

求人票には「3点セット」を書く義務がある

ここが今日いちばん役に立つところです。固定残業代を採用している会社は、募集要項や求人票に次の3つをすべて書かなければいけません。2015年(平成27年)10月に施行された若者雇用促進法に基づくルールで、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークが企業向けに周知しているものです。

① 固定残業代を除いた基本給の額
② 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
③ 固定残業時間を超える時間外労働分は、割増賃金を追加で支払う
(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代制を採用する場合は、募集要項や求人票などに、次の①〜③の内容すべてを明示してください」より)

つまり、「月給30万円(みなし残業含む)」としか書いていない求人票は、本来の書き方を満たしていません。時間数だけ、金額だけ、というのも不十分です。

3つがそろっていない求人を見つけたら、それだけで「悪い会社だ」と決めつける必要はありません。ただ、面接で必ず聞くべきサインだとは思ってください。「固定残業代は何時間分で、いくらですか」「基本給はいくらになりますか」。この2問を落ち着いて聞けるかどうかで、入社後の景色が変わります。

固定残業代を払えば「残業させ放題」ではない

もうひとつ、勘違いされやすい点です。固定残業代を払っているからといって、その時間を超えた残業をタダにできるわけではありません。超えた分は追加で支払う必要があります。

使用者が、(中略)労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
(労働基準法 第37条第1項)

時間外労働の割増率は2割5分以上、1か月60時間を超える部分は5割以上。ここは会社の裁量ではなく法律で決まっています。

スーツ姿のずんだもんが面接に向かい、四国めたんが応援している

チェック② 「固定給」と「歩合」を分けて見る

不動産の営業職は、歩合(インセンティブ)を採り入れている会社がとても多い業界です。だからこそ、求人票の金額の見え方が独特になります。

注意したいのが「月給30万円〜」という書き方です。この「〜」は、一番低い人でも30万円という意味であって、平均でも標準でもありません。そして「〜80万円」のように上の数字が併記されているとき、その上限はたいてい歩合が大きく乗った人の実績です。

私が相談を受けていて残念だなと思うのは、この上限の数字を「自分もそのくらいもらえる」と読んでしまうケースです。未経験で入った1年目に、いきなりトップ層の契約本数を取れる人はほとんどいません。

ですから、見るべきはこうです。

  • 固定でいくらもらえるか(基本給+必ず出る手当)を先に確認する
  • 歩合は「上乗せ」と考えて、生活設計には入れない
  • 歩合の条件(何を達成したらいくらか、いつ支払われるか)を聞いておく

未経験から不動産に移るなら、最初の1年を支えてくれるのは歩合ではなく固定給です。固定給が生活の土台になる——ここを外さなければ、転職後にお金で追い詰められることはかなり減らせます。

ちなみに、求人票の給与欄の書き方は会社によって本当にバラバラで、個人で全部読み解くのはしんどい場面もあります。私自身、当時これを知っていたらもっと早く動けていました。不動産・宅建に特化した 宅建Jobエージェント のような専門のエージェントなら、固定残業代や歩合の条件を求人ごとに確認したうえで教えてもらえます。無料で使えるので、今日の一歩として登録だけしておく価値はあります。

ずんだもんが困った顔をし、四国めたんが心配そうに寄り添っている

チェック③ 内定後の「労働条件通知書」と並べて読む

3つ目は、内定が出たあとの話です。ここを流してしまう人が本当に多いのですが、いちばん取り返しがきくタイミングでもあります。

会社は、労働契約を結ぶときに労働条件を明示しなければなりません。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。(中略)
2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる
(労働基準法 第15条第1項・第2項)

ここで知っておいてほしいのは第2項です。示された条件が事実と違っていたら、労働者はすぐに労働契約を解除できます。「もう入社してしまったから我慢するしかない」——そんなことはありません。

2024年4月から明示される項目が増えた

さらに、2024年(令和6年)4月1日から労働条件明示のルールが変わり、明示される項目が追加されました。転職者に直接関係するのは次の3つです。

追加された明示事項 読み取れること
就業の場所の変更の範囲 将来どこまで転勤の可能性があるか
従事すべき業務の変更の範囲 賃貸で入っても売買や管理に回る可能性があるか
有期契約を更新する場合の基準(更新上限を含む) 契約社員スタートのとき、何年働けるのか

「変更の範囲」というのは、入社直後だけでなく契約期間中の将来の見込みまで含めた範囲のことです。宅建士として賃貸仲介の店舗に応募したつもりが、数年後に売買や管理に配置転換される——そういう可能性を、入社前に文字で確認できるようになったわけです。

やることはシンプルで、労働条件通知書が届いたら、求人票と並べて1行ずつ突き合わせる。これだけです。金額、固定残業代の時間数、就業場所、業務内容。ここがずれていたら、その場で会社に確認してください。

もし確認しても直らない、説明が曖昧なままだという場合は、ハローワークや都道府県労働局(総合労働相談コーナー)に相談できます。求人票と実際の条件が違う、というのはまさに相談窓口が扱っているテーマです。一人で抱え込む必要はありません。

ずんだもんがノートにメモを取り、四国めたんが見守っている

宅建を持っているあなたは「選ぶ側」でもある

ここまで読んで、少し身構えてしまったかもしれません。でも私は、宅建に合格した人にこそ、この読み方を身につけてほしいと思っています。

宅建士は、お客さまに対して重要事項をきちんと説明する立場の資格です。契約の前に、大事なことを漏れなく伝える。それが仕事の中身そのものです。その資格を持つ人が、自分の労働契約の条件だけは読まずにハンコを押す——それはちょっともったいない。

求人票をきちんと読める人は、入社後に「話が違う」で消耗しません。そして、条件をきちんと確認してくる応募者を嫌がらない会社こそ、長く働ける会社です。

宅建という資格は、募集をかける側にとっても価値があります。焦って決めなくていい立場に、あなたはもういます。



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まとめ 求人票の給与欄で損しない3つのチェック

  1. 固定残業代が何時間分・いくら入っているかを見る。基本給・時間数と金額・超過分は追加支給、の3点セットが書かれているかを確認する(若者雇用促進法)
  2. 固定給と歩合を分けて見る。「〜」の上の数字はトップ層の実績。生活設計は固定給で組む
  3. 労働条件通知書を求人票と並べて読む。違っていたら即時に契約を解除できる(労働基準法15条2項)。2024年4月からは就業場所・業務の「変更の範囲」も明示される

3つとも、入社する前に確認できることばかりです。求人票は「夢を見る紙」ではなく「条件を確かめる紙」。そう思って読むだけで、転職の失敗はぐっと減ります。

宅建に受かったあなたなら、もう読めます。次に気になる求人を開いたら、まず給与欄の3か所を見てみてください。

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