「引越しをきっかけに、ずっと夢だった犬(猫)を飼いたい」。そう思って物件を探し始めると、意外な壁にぶつかります。
「ペット不可」の物件がとても多い。「ペット可」と書いてあっても、よく見ると「小型犬1匹まで」「猫は不可」。中には「ペット相談」という、よく分からない書き方の物件もあります。
私は宅建試験に4回落ちて5回目で合格した宅建士ですが、不動産の仕事をしていると、ペットをめぐる退去時のトラブルは本当によく耳にします。そしてその多くは、契約の前に少し確認しておけば防げたものでした。
今日は、民法と宅建業法の条文で確かめたうえで、賃貸でペットを飼うときに揉めない3つのポイントを紹介します。
ペットで揉める原因は「確認不足」
ペットのトラブルは、大きく分けると次の3つです。
- ペット不可の部屋でこっそり飼ってしまい、あとで大家さんに知られる
- 「ペット可」だと思って入居したら、飼える種類や頭数に制限があった
- 退去のときに、キズやにおいの修繕費を思った以上に請求される
どれも「知らなかった」「聞いていなかった」から始まります。ペットを飼えるかどうかを決めるのは、法律ではなく「契約書」です。だからこそ、契約書に何が書いてあるかを、入居の前に確かめることがいちばんの予防になります。

賃貸でペットを飼うときに揉めない3つのポイント
ポイント①|「ペット不可」の部屋で、こっそり飼わない
民法616条は、使用貸借の594条1項を賃貸借に準用しています。つまり借主は、「契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い」部屋を使わなければなりません。これを「用法遵守義務」といいます。
契約書に「ペットの飼育禁止」と書いてあれば、それが契約で定まった用法です。こっそり飼うことは契約違反になり、大家さんから注意を受けても改めなければ、契約を解除されるおそれがあります(民法541条)。
賃貸借の解除は、裁判では「大家さんと借主の信頼関係が壊れたといえるか」を重く見て判断される傾向があります。それでも、「小さいからバレない」「少しの間だけ」は通用しないと考えてください。鳴き声やにおいは、思った以上に周りに伝わります。
どうしても今の部屋で飼いたいなら、飼う前に大家さん(管理会社)に相談し、OKが出たら必ず書面に残してもらうのが安全です。
ポイント②|「ペット可」「ペット相談」の条件を書面で確認する
物件情報の「ペット可」と「ペット相談」は、同じ意味ではありません。「ペット相談」は、種類や大きさによっては断られることもあるという意味で使われることが多い表現です。また「ペット可」でも、契約書の特約で細かい条件が付いているのが普通です。
入居の申し込みの前に、少なくとも次の3つを確認しましょう。
- 種類:犬だけか、猫もよいか。小鳥やうさぎはどうか
- 頭数:1匹までか、2匹まで飼えるか
- 大きさ:「小型犬のみ」「体重◯kgまで」などの制限があるか
さらに注意したいのが、分譲マンションの一室を借りる「分譲賃貸」です。この場合、大家さんがOKでも、マンション全体の管理規約でペットが禁止されていれば飼えません。
宅建業法35条1項6号と施行規則16条の2第3号により、区分所有建物の貸借では、「専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定め」があれば、その内容を重要事項説明で説明することになっています。重要事項説明のときに、ペットに関する規約がどうなっているかを自分からも質問してみてください。
部屋探しは、最初から「ペット可」の物件だけに絞って探すのがおすすめです。条件に合う物件を最初から絞り込めるので、あとで「やっぱり飼えなかった」というがっかりを防げます。住む場所決まった?新生活のお部屋探しはアパマンショップで
のように、店舗で「ペット可で探したい」と最初に伝えておくのも近道です。
ポイント③|退去のときの費用を、入居の前に知っておく
民法621条は、借主は退去のときに部屋の損傷を元に戻す義務(原状回復義務)を負うとしつつ、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と定めています。日に焼けた壁紙や家具の跡などは、借主が負担しなくてよいのが原則です。
ただし、ペットによるキズやにおいは別です。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、ペットが付けた柱や壁紙のキズ、しみついたにおいは、通常の使い方を超えた損傷として、借主の負担と判断されやすいものとして扱われています。
そこで、入居の前に次のことを確認しておきましょう。
- 敷金はいくらか。ペット飼育の場合、敷金が1か月分ほど上乗せされることがあります。敷金は、未払いの家賃や借主負担の修繕費を差し引いた残りが返ってくるお金です(民法622条の2)
- 「償却」「クリーニング費用」の特約があるか。退去のときに、キズの有無に関係なく差し引かれるお金が決まっていないか
- 入居した日に、部屋のキズを写真に残す。もともとあったキズまで、ペットのせいにされないための大事な証拠になります

今日からできる3つのアクション
- 物件を探すときは、最初から「ペット可」で絞り込み、飼いたい種類・頭数・大きさをメモにまとめておく
- 申し込みの前に、契約書(特約)と、分譲賃貸なら管理規約のペットの決まりを確認する
- 敷金・償却・クリーニング費用の金額を確認し、入居した日に部屋の写真を撮る
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まとめ
- ペットを飼えるかどうかを決めるのは契約書。トラブルの原因の多くは確認不足
- ポイント①=「ペット不可」でこっそり飼うのは用法遵守義務の違反(民法616条・594条1項)。解除のおそれもある
- ポイント②=「ペット可」でも種類・頭数・大きさの条件を書面で確認。分譲賃貸は管理規約も(重要事項説明の対象)
- ポイント③=ペットのキズ・においは借主負担になりやすい(民法621条)。敷金・償却の条件を先に確認し、入居日に写真を撮る
ペットは家族の一員です。契約の前に少しだけ確認しておくことが、ペットとも大家さんとも気持ちよく暮らすための、いちばんの近道です。
※本記事は令和8年10月時点の法令にもとづく一般的な解説です。実際の取扱いは契約書・管理規約の内容によって異なります。個別のケースは、不動産会社や弁護士などの専門家にご確認ください。
出典:民法(明治29年法律第89号)541条・594条1項・616条・621条・622条の2/宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)35条1項6号・同法施行規則16条の2第3号(e-Gov法令検索)/国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
