中古の家やマンションを買った人から、決まって同じ質問をされます。
「引き渡しの日に『固定資産税の精算金』っていうお金を請求されたんですけど、あれって何だったんですか?」
引き渡しの席で渡される「資金計算書」には、物件代金、仲介手数料、登記費用、ローンの事務手数料……とお金の名前が並びます。その一番下のあたりに、固定資産税等精算金と一行だけ書かれていて、金額は数万円。何百万円という数字が並ぶ中では小さく見えて、「これは何ですか」と聞き返すタイミングを逃してしまう。そういう人が本当に多いのです。
結論から言うと、固定資産税の精算金は「税金の支払い」ではありません。売主と買主の間で行う、代金のやりとりです。そして法律で金額が決まっていないからこそ、同じ引き渡し日でも、条件次第で負担額が数万円変わります。
この記事では、中古住宅の購入で請求される固定資産税の精算金について、知らないまま払って損しないための3つのポイントを、宅建士・FP2級の私が条文と国税庁の見解をもとに解説します。
そもそも「固定資産税の精算金」とは何なのか
固定資産税は「1月1日の所有者」に1年分がかかる
まず大前提です。固定資産税は、その年の1月1日時点で土地や家屋を持っていた人に対して、1年分がまとめて課されます。
根拠は地方税法です。
第三百四十三条 固定資産税は、固定資産の所有者(略)に課する。
第三百五十九条 固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
(地方税法)
この「賦課期日」というのが1月1日。都市計画税も同じで、地方税法702条の6が同じく1月1日を賦課期日と定めています。
つまり、年の途中で家を買っても、その年度の納税通知書は売主のところに届きます。買主のところには来ません。
買主に「納税義務」は発生しない
ここが一番の勘所です。国税庁の質疑応答事例には、こう明記されています。
その年度の賦課期日後に所有者の異動が生じたとしても、新たに所有者となった者がその賦課期日を基準として課される固定資産税等の納税義務を負担することはありません。
(国税庁 質疑応答事例「未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合」)
読んだとおりです。買主には、その年度の固定資産税を納める法律上の義務はありません。「では払わなくていいのか」というと、そうもいきません。理由は次のとおりです。
精算金の正体は「売買代金の一部」
売主は1年分を先に納めています。ところが引き渡したあとの期間は、売主はもうその家を持っていない。それなのに税金だけ負担し続けるのは不公平です。
この不公平をならすために、「引き渡し日から先の分は買主が日割りで受け持つ」という約束を、売買契約書に書き込むのが実務の慣習になっています。これが精算金です。
国税庁は、この精算金の性質をはっきり言い切っています。
地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(略)として課税の対象となります。
(国税庁 質疑応答事例「未経過固定資産税等の取扱い」)
譲渡所得のほうの事例でも「実質的にはその土地及び家屋の譲渡の対価の一部を成すものと解するのが相当」とされています。つまり精算金は、税金ではなく物件代金の延長線上にあるお金だということです。

それでも多くの人が「言われた金額」をそのまま払ってしまう3つの理由
理由①|名前に「固定資産税」と入っているから
「固定資産税等精算金」と書かれていれば、誰でも税金だと思います。税金なら金額は法律で決まっているはずで、確認しても意味がない。そう考えて、そのまま受け取ってしまうのです。実際は法律ではなく契約です。契約なら、中身を確認するのは買主の当然の権利です。
理由②|計算の「出発点」が決まっていないことを知らない
日割りで計算するということは、「どの日から1年と数えるか」という出発点が必要です。これを起算日といいます。ところがこの起算日は、法律でも通達でも決まっていません。地域や仲介会社の慣習で違います。これを知らないと、出てきた金額が高いのか安いのかを判断する物差しがありません。
理由③|金額が「数万円」で、他の費用に埋もれてしまう
物件代金が2,000万円、仲介手数料が70万円という並びの中に、48,000円が混ざっている。桁が2つ違うので、どうしても軽く見えます。けれど、この数万円のうちの3万円前後は、聞くだけで変わり得る部分です。次の章で具体的に見ていきます。

精算金で損しない3つのポイント
ポイント①|「税金ではなく代金の一部」と理解しておく
まずはここです。精算金を税金だと思っている間は、質問そのものが出てきません。「これは代金の一部だ」と分かっていれば、「この金額はどう計算したものですか」と自然に聞けます。
ついでに知っておくと得な話をひとつ。精算金は譲渡対価の一部なので、売主が消費税の課税事業者(不動産会社など)の場合、建物分の精算金には消費税がかかります。個人の売主から買うときはかかりません。見積書で消費税の内訳が合わないと感じたら、この点を確認してみてください。
ポイント②|起算日を必ず聞く(数万円の差が出ます)
起算日は大きく2通りあります。
- 1月1日起算=1月1日から12月31日までを1年と数える(関東で多いといわれる)
- 4月1日起算=4月1日から翌年3月31日までを1年と数える(関西で多いといわれる)
あくまで傾向で、法律上の決まりではありません。実際は仲介会社の書式で決まっていることが多いです。
では、どのくらい違うのか。年税額12万円の物件を、10月1日に引き渡してもらう場合で計算してみます(引き渡し日当日は買主負担・365日で日割りとした場合)。
| 起算日 | 買主が負担する期間 | 日数 | 買主の負担額 |
|---|---|---|---|
| 1月1日起算 | 10月1日〜12月31日 | 92日 | 約30,200円 |
| 4月1日起算 | 10月1日〜翌年3月31日 | 182日 | 約59,800円 |
同じ物件、同じ引き渡し日なのに、差はおよそ3万円です。秋に引き渡しを受ける人ほど差が大きくなります(4月1日起算だと、買主の負担期間が翌年3月まで続くため)。
だから、資金計算書をもらった段階で「起算日はいつですか」と一言聞いてください。それだけで、金額の意味が分かります。あわせて「引き渡し日当日はどちら負担か」「うるう年は366日で割るのか」も聞けば完璧です。
なお、金額を下げる交渉は必ず通るものではありません。ただ、納得して払うのと、分からないまま払うのは別のことです。買い替えで今の住まいを先に売る予定の方は、売る側でもこの精算金を受け取る立場になります。売却価格の目安を知るところから始めるなら、【三井のリハウス】のような大手の査定から入ると、相場感をつかみやすいです。![]()
ポイント③|「翌年からの税額」も一緒に確認する
精算金は、その年度の税額を分けるだけの話です。買主が本当に気にすべきなのは、翌年から自分に届く納税通知書の金額のほうです。ここが上がることがあります。
理由は、新築住宅の減額措置が終わるタイミングです。地方税法の附則15条の6は、新築された住宅の建物分の固定資産税を、次の期間だけ半額にすると定めています。
- 一般の住宅=新たに課税されることになった年度から3年度分、税額の2分の1を減額
- 地上3階以上の耐火建築物(マンションなど)=5年度分、税額の2分の1を減額
(いずれも令和4年4月1日から令和13年3月31日までに新築されたものが対象。長期優良住宅はさらに長い期間の特例があります)
ということは、築3年や築4年の戸建てを買うと、翌年から建物分の税額が上がる可能性があるということです。「今年の精算金が安かったから来年も安い」とは限りません。
もう1点。都市計画税も固定資産税と一緒に届きます。市街化区域内の土地と家屋にかかる税で、税率は0.3%を超えられない(地方税法702条の4)という上限があります。地方税法702条の8により、固定資産税とあわせて賦課徴収されるので、納税通知書には両方が載ってきます。
土地のほうには住宅用地の特例があり、200平方メートル以下の部分は課税標準が6分の1になります(地方税法349条の3の2)。これが効いているかどうかでも税額は大きく変わるので、「来年の固定資産税と都市計画税は、合わせておよそいくらになりますか」と聞いておくのがおすすめです。仲介会社は売主の今年度の課税明細書を見ているので、たいてい答えられます。
中古住宅を買う前に確認したいことは、税金のほかにもあります。建物の状態そのものについては中古住宅の「建物状況調査」って必要?|購入前に確認したい3つのポイント、マンションなら中古マンションは「管理」を買え|宅建士が購入前に必ず見る3つのチェックポイントもあわせて読んでみてください。

買ったあとに来る「もう一つの税金」にも注意
固定資産税とは別に、不動産を取得すると不動産取得税という都道府県の税金が、忘れたころに届きます。こちらは軽減措置の申告をしないと満額の請求が来ることがあるので、精算金より金額のインパクトが大きい場合があります。
詳しくはマイホームを買ったあとに届く「不動産取得税」|2026年に0円にする3つのポイントにまとめました。あわせて、住宅ローン控除で戻ってくるお金も先に計算しておくと、購入後の家計の見通しが立てやすくなります。
買い替えを考えている方は、先に手持ちの物件がいくらで売れるかを把握しておくと、資金計画がぐっと現実的になります。
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まとめ|精算金は「聞けば分かる」お金
中古住宅の購入で請求される固定資産税の精算金について、3つのポイントをおさらいします。
- ポイント①|精算金は税金ではなく、売買代金の一部。買主にその年度の納税義務はなく、契約による約束で払っている(地方税法343条・359条/国税庁 質疑応答事例)
- ポイント②|起算日を必ず聞く。1月1日起算か4月1日起算かで、同じ引き渡し日でも数万円変わる(年税額12万円・10月1日引き渡しなら約3万円の差)
- ポイント③|翌年からの税額も確認する。新築住宅の半額措置は一般の住宅で3年度分、3階以上の耐火建築物で5年度分(地方税法附則15条の6)。都市計画税も一緒に届く
私が現場で見てきて思うのは、この3つはどれも「聞くだけ」でできることだということです。値切るわけでも、専門知識で戦うわけでもありません。ただ聞いて、納得して払う。それだけで、引き渡しの日の気持ちがまったく違います。
家を買うのは、多くの人にとって一生で一度か二度です。分からないお金を分からないまま払わない。その一歩として、この記事を役立ててもらえたらうれしいです。
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