宅建業の免許がおりて、事務所も整った。いよいよ「初めてのお客様の契約」が見えてきたとき、いちばん緊張するのが重要事項説明と契約の書面ではないでしょうか。
会社勤めのときは先輩や事務の人がそろえてくれた書類も、ひとりで開業すると、段取りから保管まで全部自分の責任になります。順番をひとつ間違えるだけで、法律違反になってしまうこともあります。
そこでこの記事では、初めての契約の前に見ておきたい6つのチェック項目を、宅建業法の条文にそってチェック表にまとめました。印刷して、契約の前日に1つずつ□に印をつけて使ってください。
まずは全体の流れ|「説明→契約→書面→帳簿」の順番
仲介(媒介)で売買や賃貸の契約をまとめるとき、宅建業者がやることは大きく4つです。
- 契約の前:重要事項説明(35条書面を渡して説明)
- 契約:売主と買主(貸主と借主)が契約を結ぶ
- 契約のあと:契約の内容をまとめた書面(37条書面)を渡す
- 取引のつど:事務所の帳簿に記録する
宅建の勉強で覚えた条文ですが、開業すると「いつ・誰が・誰に」を守れているかが毎回問われます。35条・37条の違反は業務停止の対象になる規定として、65条2項2号に並んでいます。

初めての契約の前に見るチェック表(6項目)
□1 重要事項説明は「契約が成立する前」にする
宅建業法35条1項は、重要事項説明を「契約が成立するまでの間に」するよう定めています。説明する相手は、物件を買う人・借りる人です。
よくある失敗は、お客様の都合に合わせて「契約書にサインしてもらってから、あとで説明する」という流れにしてしまうこと。説明が先、契約があと。当日の段取り表にも、この順番をはっきり書いておきましょう。
□2 説明するのは宅建士。宅建士証を見せてから話す
重要事項説明は、宅建士がしなければなりません(35条1項)。専任の宅建士である必要はありませんが、ひとり開業なら自分が説明することになります。
説明するときは、相手から求められなくても宅建士証を提示します(35条4項)。「財布に入れたまま事務所に置いてきた」とならないよう、契約の前日にカバンに入っているか確認してください。有効期限(5年)が切れていないかも、あわせて見ておきましょう。
□3 35条書面(重要事項説明書)に宅建士が記名している
重要事項説明書を渡すときは、宅建士がその書面に記名しなければなりません(35条5項)。ひな形を使って作ると、記名欄が空いたまま印刷してしまうことがあります。
メールやPDFなど電子で渡すこともできますが、その場合は相手の承諾を先にもらうことが条件です(35条8項)。「電子でお送りしてよいですか」と、記録が残る形で確認しておくと安心です。
□4 37条書面を「遅滞なく」、両方の当事者に渡す
契約が成立したら、契約の内容をまとめた書面(いわゆる37条書面)を渡します。売買の仲介なら、売主と買主の両方に遅滞なく交付する決まりです(37条1項)。賃貸の仲介でも、貸主と借主の各当事者に交付します(37条2項)。
実務では、契約書に必要な事項を入れて37条書面をかねることが多いです。代金・引渡しの時期・移転登記の申請の時期など、37条に並んでいる事項が契約書にもれなく入っているかを、ひな形の段階で一度チェックしておきましょう。
□5 37条書面にも宅建士が記名している
37条書面にも、宅建士の記名が必要です(37条3項)。重要事項説明書だけでなく、契約の書面にも記名がいる点は、試験でもよく出るところですね。
なお、37条の書面を交付しなかった場合は50万円以下の罰金の対象にもなります(83条1項2号)。「契約書は当事者同士で作ったから」と、渡すのを忘れないようにしてください。
□6 取引のたびに帳簿へ記録し、5年間保存する
宅建業者は、事務所ごとに帳簿を備え、取引があるたびに、年月日・物件の所在と面積・売買金額や賃料・報酬の額などを記録します(49条、施行規則18条1項)。
帳簿は事業年度の末日で閉じて、閉じてから5年間保存します。自分が売主になる新築住宅の取引は10年間です(施行規則18条3項)。パソコンのデータで残し、必要なときに紙に出せる形にしておくこともできます(同条2項)。帳簿を備えなかったり記録しなかったりすると、こちらも50万円以下の罰金の対象です(83条1項4号)。

チェック表をまとめて見ると
| □ | チェック項目 | 根拠 |
|---|---|---|
| □1 | 重要事項説明は契約の前に、買う人・借りる人へ | 35条1項 |
| □2 | 説明は宅建士。宅建士証を提示する | 35条1項・4項 |
| □3 | 35条書面に宅建士が記名(電子なら事前に承諾) | 35条5項・8項 |
| □4 | 37条書面を遅滞なく、両方の当事者へ | 37条1項・2項 |
| □5 | 37条書面にも宅建士が記名 | 37条3項 |
| □6 | 取引のつど帳簿に記録、閉じてから5年保存 | 49条、施行規則18条 |
私は宅建に5回目の挑戦で合格しました。試験勉強で何度も見た35条と37条ですが、「自分が説明する側に立つ」と思うと、同じ条文でも重みがまったく違って見えます。覚えた知識を、お客様を守る段取りに変えるのが、このチェック表の役目です。

お金の記録は、税金の帳簿もいっしょに整える
宅建業法の帳簿とは別に、個人で開業した人は税金の申告のための帳簿も必要です。初めての報酬が入る前に、開業届と青色申告の準備をすませておくと、あとで慌てずにすみます。
開業の第一歩は弥生のかんたん開業届(無料)で。画面に沿って入力するだけで、開業届と青色申告承認申請書が作れます。
報酬の上限や媒介契約のルールは、宅建業で開業したら仲介手数料はいくらもらえる?と宅建業で開業したら最初に結ぶ「媒介契約」でまとめています。
今日からできること
- このチェック表を印刷して、契約書類のファイルの一番上にはさんでおく
- 重要事項説明書と契約書のひな形を開き、宅建士の記名欄があるか確かめる
- 宅建士証の有効期限を確認し、更新が近ければ法定講習の日程を調べる
- 帳簿の書式(紙かパソコンか)を決めて、1件目を書く場所を用意する
まとめ|「説明が先、書面はもれなく、記録は毎回」
初めての契約の前に見ておきたい6つのチェック項目をおさらいします。
- 重要事項説明は契約の前に、買う人・借りる人へ(35条1項)
- 説明は宅建士が、宅建士証を見せてから(35条4項)
- 35条書面に宅建士の記名(35条5項)
- 37条書面を遅滞なく・両方の当事者へ(37条1項・2項)
- 37条書面にも宅建士の記名(37条3項)
- 取引のつど帳簿に記録し、5年間保存(49条、施行規則18条)
開業してすぐは、目の前の契約をまとめることで頭がいっぱいになります。だからこそ、迷ったときに見返せる「自分用のチェック表」を、最初の1件目の前に作っておきましょう。
※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。※本記事は令和8年10月時点の法令にもとづく一般的な解説です。書面の様式や電子交付の方法などは、免許を受けた都道府県や所属する保証協会の案内で必ずご確認ください。
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第35条・第37条・第49条・第65条・第83条/「宅地建物取引業法施行規則」第18条

