宅建業で開業したら仲介手数料はいくらもらえる?|報酬の上限で違反しない3つのルール|宅建士が解説

不動産経営
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宅建業の免許が下りて、いよいよ営業開始。そのタイミングで必ず聞かれるのが、この質問です。

「仲介手数料って、いくらもらってもいいんですか?」

自分で始めた商売なのだから、値段は自分で決められる。普通の感覚ならそう思います。実際、飲食店でもリフォーム業でも、料金を決めるのは経営者です。

ところが宅建業だけは違います。仲介手数料の上限は、法律と国の告示で決められています。超えて受け取れば業務停止と罰金。しかも、受け取っていなくても「要求しただけ」で罪になる条文まであります。

開業して最初の取引で、知らずに上限を超えてしまう。これは笑い話ではなく、実際に処分事例がある世界です。

この記事では、宅建業で開業したときに受け取れる仲介手数料について、違反せずに堂々と請求するための3つのルールを、宅建士の私が条文と告示の原文をもとに解説します。

そもそも仲介手数料は「自分で決められない」

根拠は宅建業法46条

まず大前提です。宅地建物取引業法(宅建業法)には、報酬についてこう書かれています。

第四十六条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。

 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。

(宅地建物取引業法)

「国土交通大臣の定めるところによる」。つまり報酬の額は、国が決めたものに従うという意味です。そして2項で、その額を超えて受け取ることをはっきり禁じています。

実際の金額を決めているのは「告示」

では、その「国土交通大臣の定め」はどこにあるのか。昭和45年建設省告示第1552号という一枚の告示です。正式名称は「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」。

50年以上前のものですが、今も現役です。直近では令和6年6月21日(国土交通省告示第949号)に改正され、令和6年7月1日から施行されています。この改正内容が、後で出てくる「空き家の特例」です。

各都道府県のサイトで全文が公開されているので、開業前に一度は原文を読んでおくことをおすすめします。ネットの解説記事だけで済ませると、改正に気づかず古い数字のまま請求してしまう危険があります。

不動産店舗の前でずんだもんと四国めたんが新しい看板を掲げている

ルール①|上限の計算を正しく知る

売買の媒介は「3段階に区切って」計算する

売買の媒介で依頼者の一方から受け取れる上限は、代金を3つに区切って、それぞれに割合をかけて合計した額です(告示 第2)。

  • 200万円以下の部分 = 5.5%
  • 200万円を超え400万円以下の部分 = 4.4%
  • 400万円を超える部分 = 3.3%

この割合には消費税が含まれています(課税事業者の場合)。「3%+6万円」という数字を見たことがある方も多いと思いますが、あれは税抜の表記です。実務で請求書に書くのは税込のほうなので、3.3%と6万6千円で覚えておくほうが間違えません。

400万円超なら「速算式」が使える

毎回3段階の足し算をするのは現実的ではありません。代金が400万円を超えるなら、次の速算式で同じ答えが出ます。

代金 × 3.3% + 6万6千円(税込)

たとえば3,000万円の中古住宅を媒介した場合。

  • 3,000万円 × 3.3% = 99万円
  • 99万円 + 6万6千円 = 105万6千円

これが売主から受け取れる上限。買主からも媒介を依頼されていれば、買主からも同額まで受け取れます(いわゆる両手)。

ここで絶対に忘れてはいけないのが、これは「上限」であって「定価」ではないということです。告示は「〜以内とする」と書いているだけで、「この金額を請求せよ」とは一言も言っていません。上限の範囲内で、依頼者と話し合って決めるものです。

賃貸の媒介は「合計で家賃1か月分」まで

賃貸の媒介は考え方が変わります。告示 第4はこうです。

宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(略)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(略)の1月分の1.1倍に相当する金額以内とする。

(昭和45年建設省告示第1552号 第4)

ポイントは「依頼者の双方から」「合計額」という部分です。貸主と借主の両方から受け取る額を足して、家賃1か月分+消費税が天井。片方から1か月分もらったら、もう片方からは1円ももらえません。

住まいの賃貸は「承諾」がないと半月分まで

ここが開業したての方がいちばん間違えるところです。告示 第4には続きがあります。

この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1月分の0.55倍に相当する金額以内とする。

(同 第4)

つまり住居用の賃貸では、承諾がなければ、一方から受け取れるのは家賃の半月分+消費税まで。世間では「仲介手数料は家賃1か月分」が当たり前のように言われますが、条文上の原則は逆で、1か月分をもらうには承諾が要ります。

そしてもうひとつ大事なのが、承諾のタイミングです。条文は「媒介の依頼を受けるに当たって」と書いています。契約直前でも、鍵の引き渡し時でもありません。媒介を引き受けるその時点までに承諾をもらう必要があります。後出しは通用しません。

四国めたんがホワイトボードの前で要点をまとめている

ルール②|2024年7月に広がった「空き家の特例」を生かす

安い空き家ほど、手間は変わらない

200万円の空き家を売る仕事を想像してみてください。現地調査も、役所調査も、重要事項説明も、契約書の作成も、3,000万円の物件と作業量はほとんど同じです。それなのに受け取れる報酬は11万円(税込)。

これでは誰も引き受けません。結果として安い空き家が市場に出てこない。この問題に対応するために作られたのが、空き家の特例です。

800万円以下の売買は「33万円」まで

令和6年7月1日施行の改正で、低廉な空家等(代金800万円以下)の売買・交換の媒介は、依頼者から30万円の1.1倍=33万円(税込)まで受け取れるようになりました(告示 第7)。

改正前は「400万円以下・18万円+消費税」でした。対象も金額もほぼ倍に広がっています。

実際の差を見てみましょう。400万円の空き家を媒介した場合の本来の上限は、

  • 200万円 × 5.5% = 11万円
  • 残り200万円 × 4.4% = 8万8千円
  • 合計 19万8千円

特例を使えば、ここから33万円まで届きます。代理の場合はさらにこの2倍が上限です(告示 第8)。

長期の空き家の賃貸は「家賃2か月分」まで

この改正では、賃貸にも新しい特例ができました(告示 第9)。長期の空家等――現に長期間使われておらず、または将来にわたって使われる見込みがない宅地建物――の貸借の媒介では、双方から受け取る合計額を家賃1か月分の2.2倍(=2か月分+消費税)まで引き上げられます。

ただし条件があります。借主から受け取る額は、従来どおりの上限のまま(1.1倍以内、住居用で承諾がなければ0.55倍以内)。つまり増える分は貸主が負担するという設計です。借主の負担を増やす特例ではない、ここを取り違えると一発で違反になります。

特例を使うには「事前の説明と合意」が要る

そしてもうひとつ。この特例には、金額以外の条件があります。国土交通省は告示の改正と同時に「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」を改正し、媒介契約の締結に際してあらかじめ、上限の範囲内で報酬額について依頼者に説明し、合意する必要があることを明記しました。

黙って高めに請求するのではなく、「この物件は特例の対象なので、通常の計算より高い◯◯円をいただきます」と先に伝えて、納得してもらう。それが特例を使う条件です。開業したばかりでこの一手間を惜しむと、後からトラブルになります。

空き家の仕事は、これから確実に増えます。仕組みを理解している業者だけが、正当な報酬を受け取りながら地域の空き家を動かせる。そういう時代になったと考えてよいと思います。

ずんだもんが驚き、四国めたんが横で微笑んでいる

ルール③|違反したときの「重さ」を知る

上限超過は業務停止+100万円以下の罰金

では、うっかり上限を超えて受け取ってしまったらどうなるのか。

46条2項違反は、65条2項2号により1年以内の業務停止の対象です。さらに82条2号で100万円以下の罰金。情状が特に重ければ免許取消しもあります。

開業1年目で1年の業務停止は、事実上の廃業です。「知らなかった」では済みません。

「要求しただけ」でも罪になる(47条2号)

もっと怖い条文があります。

第四十七条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

 不当に高額の報酬を要求する行為

(宅地建物取引業法)

受け取った、ではありません。要求した時点で違反です。実際に1円も受け取っていなくても、口に出した瞬間に成立します。

罰則は80条で1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方。46条の罰金刑だけの世界とは重さが違います。

報酬額の「掲示」を忘れると50万円以下の罰金

意外と見落とされるのが、46条4項の掲示義務です。

 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。

(宅地建物取引業法)

報酬額表を事務所に貼っておく義務です。怠ると83条1項2号で50万円以下の罰金。標識や従業者名簿と並んで、営業初日までに事務所へそろえておくべきものの一つです。

各都道府県のサイトに掲示用のPDFが用意されていますから、印刷して貼るだけで済みます。開店準備のチェックリストに必ず入れておいてください。

広告費は「頼まれた分」しかもらえない

最後にもう一つ。告示 第11(1)には、報酬以外にお金を受け取ってはいけないと書かれています。ただし例外がひとつ。

ただし、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない。

(昭和45年建設省告示第1552号 第11(1))

「依頼者の依頼によって行う」広告だけが別途請求できるという意味です。自社の判断で出したポータルサイトの掲載料や、通常の営業活動としてのチラシは、報酬に含まれていて別請求できません。

「広告費として実費をもらう」という運用は、依頼があったという事実がなければ成立しません。依頼者から特別に頼まれたときは、その内容と金額を書面で残しておくのが安全です。

ちなみに、開業の手続き自体はもっと手前の話です。これから開業届を出す方は、無料で開業届と青色申告承認申請書が作れるサービスを使うと、初日の事務がかなり楽になります。

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免許を取るまでの流れは宅建業の免許が下りない人とは?|開業前に確認したい「欠格事由」3つのポイントに、開業後の広告ルールは宅建業で開業したら広告に要注意|処分を招かない3つのルールにまとめています。個人か法人かで迷っている方は宅建業の開業、個人と法人どっちがいい?もあわせてどうぞ。

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まとめ|手数料の説明ができる人が選ばれる

宅建業で開業したときの仲介手数料について、3つのルールをおさらいします。

  • ルール①|上限は国が決めている。売買は代金の3.3%+6万6千円(400万円超の速算式・税込)、賃貸は双方合計で家賃1か月分+税、住居用は承諾がなければ一方から半月分まで(宅建業法46条/告示 第2・第4)
  • ルール②2024年7月から空き家の特例が拡大。800万円以下の売買は33万円まで、長期の空き家の賃貸は家賃2か月分まで。ただし借主の負担は増やせず、媒介契約の前に説明して合意が必要(告示 第7・第9/解釈・運用の考え方)
  • ルール③|超えれば1年以内の業務停止+100万円以下の罰金要求しただけでも1年以下の拘禁刑(47条2号・80条)。報酬額の掲示を忘れると50万円以下の罰金(46条4項・83条1項2号)

数字だけ並べると窮屈に見えますが、逆の見方もできます。上限が決まっているということは、価格競争で消耗しなくていいということでもあります。同じ枠の中で選ばれるかどうかは、結局そこから先の仕事の中身です。

私が思うのは、「この金額の根拠は何ですか」と聞かれたときに、条文と告示で説明できる人が信用されるということです。あいまいに濁す業者と、その場で計算根拠を示せる業者。お客さんはちゃんと見ています。

開業したら、まず報酬額表を事務所に貼る。そして自分の口で説明できるようにしておく。それだけで、スタートの信用がひとつ増えます。

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