受験申込みは済ませた。受験料も払った。それなのに、最近こう思ってしまう――「本当に受けに行くのかな、自分」。この記事は、そんな気持ちを抱えたまま日曜の夜を迎えた方へ向けて書いています。
本番の宅建試験は令和8年10月18日(日)。この記事が公開される9月27日から数えると、残り21日=ちょうど3週間です。この時期になると、勉強が進まない不安とは別の種類の不安――「受けること自体が怖い」という気持ちが顔を出します。
私は宅建試験に4回落ちて、5回目で合格しました。落ちた4年間、毎年この時期に「今年は受けるのをやめようか」と本気で考えました。それでも結局5回とも会場に行き、5回目で受かりました。この記事では、そのとき私を会場まで運んでくれた3つの理由をお伝えします。
「受けるのが怖い」は、直前期に必ず来る
直前期に受験をためらう人は、やる気がない人ではありません。むしろ逆で、真剣に取り組んだ人ほど、本番が近づくほど怖くなります。準備してきたぶんだけ、失うものが増えた気がするからです。
私の場合、9月の終わりごろに決まって同じことを考えました。「このまま受けて、また不合格通知を見るのか」「受けなければ、少なくとも落ちた自分を見なくて済む」。仕事から帰ってテキストを開いても、頭の中ではその計算ばかりしていました。
まずお伝えしたいのは、この感情が湧くこと自体は、あなたが真剣だった証拠だということです。どうでもいい試験なら、受けるのが怖くなったりしません。

怖いのは「点数」ではなく「本気が採点されること」
「怖い」の正体を分解すると、点数そのものではないことが多いです。怖いのは、1年かけて積み上げた自分の本気に、50問で点数がつくことです。
受けなければ、その採点は行われません。だから脳は「受けない」を安全な選択肢のように扱います。けれど、ここには大きな見落としがあります。受けなかった年も、合格していないという意味では不合格の年と同じです。手元に残るのは「受かっていない」という同じ結果と、「試さなかった」という後悔だけになります。

直前期に「受けたくない」と思わせる3つの理由
自分の意志が弱いからだ、と片付ける前に、気持ちが逃げに傾く仕組みを知っておきましょう。理由がわかれば、対処も設計できます。
① 模試や過去問の点数が、ちょうど伸び悩む時期だから
直前期は、解けば解くほど自分の穴が見えます。9月は点数が一度停滞しやすい時期でもあり、「この点で本番に行っても意味がない」という考えが生まれます。しかし本番までの3週間は、まさにその穴を埋めるための期間です。穴が見えている今の状態は、準備が進んでいる証拠です。
② 受験票が届くまでの空白期間で、実感が薄れるから
申込みは7月に終わっていて、受験票が手元に来るのは10月に入ってから。この約2か月の空白のあいだに、「本当に自分は受験生なのだろうか」という現実感の薄れが起きます。物理的な証拠が手元にないと、気持ちは簡単に逃げ道を探します。
③ 当日の段取りを知らないまま、不安だけが膨らむから
何時に行けばいいのか、途中で気分が悪くなったらどうするのか、時計は使えるのか。知らないことが多いほど、当日のイメージは「怖いもの」になります。不安の多くは、情報不足からできているのです。

私が宅建試験を棄権しなかった3つの理由
ここからが本題です。私が4年間、落ちるとわかっているような年でも会場に行き続けた理由は、次の3つでした。
理由① 受けないと、今年の答えが永遠に出ないから
棄権しても、合格発表の日にあなたの番号が載ることはありません。結果としては不合格の年とまったく同じです。そのうえで、失うものは増えます。
受験手数料は8,200円。不動産適正取引推進機構は「いったん払い込まれた受験手数料は、申込みが受理されなかった場合及び機構が定める場合を除き、返還しません」と明示しています(出典:一般財団法人不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」)。つまり行かなくても8,200円は戻らず、次のチャンスは1年後です。宅建試験は毎年1回、10月の第3日曜日にしか実施されません。
逆に、受けさえすれば必ず持ち帰れるものがあります。「今の自分は何点だったのか」という事実です。私は落ちた4回とも、自己採点の結果を必ずノートに書きました。何点足りなかったのか、どの分野で落としたのか。その積み重ねが、5回目の勉強計画を作ってくれました。受けなかった年があったら、その1年ぶんのデータは存在しませんでした。
理由② 残り3週間は、点数を変えるのに十分な時間だから
「今から3週間で何が変わるのか」と思うかもしれません。数字にしてみてください。1日2時間なら、3週間で42時間です。直前期の42時間は、勉強を始めたばかりの42時間とは価値がまったく違います。すでに一度通した知識を、得点に変える時間だからです。
この3週間でやることは、増やすことではありません。新しい教材に手を出さず、間違えた問題だけをもう一度解く。これに尽きます。特に宅建業法は50問中20問を占める最大の分野で、パターンが決まっているぶん直前期でも伸びます。私が5回目で合格した年も、最後の3週間でやったのは業法の解き直しと、間違いノートの見直しだけでした。
宅建試験は、1点差で合否が分かれる試験です。だからこそ、3週間で拾える1点には意味があります。怖いときほど、考えるより手を動かしたほうが気持ちは落ち着きます。
そしてもうひとつ。受かったあとに何が待っているかを具体的に知っておくと、「受けに行く理由」は強くなります。私も、宅建士としての求人にどんなものがあるのかを眺めるだけで、気持ちが前を向いた日がありました。無料で見られるので、手が止まった夜の気分転換としても悪くありません。
理由③ 当日の段取りを先に決めると、怖さが小さくなるから
3つ目が、私にとっていちばん効きました。当日の予定を先に埋めてしまうことです。公式に決まっていることを知るだけで、怖さはかなり減ります。令和8年度の試験について、機構が公表している内容は次のとおりです。
- 試験日時:令和8年10月18日(日)13時から15時まで(2時間)。登録講習修了者は13時10分から15時まで(1時間50分)
- 着席時刻:注意事項の説明があるため、12時30分(登録講習修了者は12時40分)までに自席に着席
- 途中退出:試験時間中の途中退出はできない。退出した場合は棄権または不正受験とみなされ、採点されない
- 受験票の発送:令和8年10月2日(金)予定。10月9日(金)になっても届かない場合は、都道府県の協力機関または機構に問い合わせる
- 合格発表:令和8年11月25日(水)
(出典:一般財団法人不動産適正取引推進機構「宅建試験のスケジュール」)
ここから逆算すると、当日やることは自動的に決まります。12時30分に着席するには、会場に12時前後に着けばいい。そのためには家を何時に出るか。昼食はいつ、何を食べるか。2時間は席を立てないので、直前の水分量も考えておく。ここまで決めてしまえば、当日の朝に迷う場面はほとんどなくなります。
そして10月2日に受験票が届いたら、それを机の見える場所に置いてください。私は5回目の年、受験票を問題集の表紙に挟んでいました。「自分は受験生である」という物理的な証拠が手元にあるだけで、逃げたい気持ちはずいぶん出にくくなります。
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まとめ:会場のいすに座るだけで、去年より前に進んでいる
最後に、3つの理由をもう一度まとめます。
- 受けないと、今年の答えが永遠に出ない。棄権も不合格と同じ扱いで、8,200円は戻らず、次は1年後
- 残り3週間はまだ変えられる。1日2時間なら42時間。増やさず、間違えた問題だけを解き直す
- 当日の段取りを先に決める。13時開始・12時30分着席・途中退出なし。決まっていることを知れば怖さは減る
受けるのが怖いのは、あなたが手を抜かなかったからです。その感情を消そうとしなくてかまいません。怖いまま、会場のいすに座ればいいのです。座ってしまえば、あとは2時間、目の前の50問と向き合うだけになります。
私は4回、そうやって座りました。そして5回目に受かりました。10月18日の午後1時、あなたも同じいすに座っていることを願っています。
