「住宅ローン控除があるから、ローンを組んでも大丈夫」——マイホームを検討し始めた方から、よく聞く言葉です。
ところが、いざ入居した翌年に還付金を見て「思ったより戻ってこなかった」と驚く方が本当に多い。私も宅建士・FP2級として相談を受けるなかで、この落差を何度も見てきました。
理由ははっきりしています。住宅ローン控除は「借りた金額の0.7%が戻る制度」ではないからです。上限が3か所にあり、そのどれかに引っかかると、期待していた金額から一気に目減りします。
この記事では、2026年(令和8年)に入居する場合を前提に、住宅ローン控除で結局いくら戻るのか、そして損をしないための3つのポイントを整理します。物件を決める前に読んでおくと、ローンの組み方そのものが変わるはずです。
住宅ローン控除は「年末残高の0.7%が13年」戻る制度
まず仕組みから確認します。住宅ローン控除(正式には住宅借入金等特別控除)は、その年の12月31日時点のローン残高に0.7%をかけた金額が、所得税・住民税から差し引かれる制度です。
2026年に新築住宅へ入居する場合、控除期間は13年間。ポイントは「戻る」ではなく「納める税金が減る」という点で、すでに天引きされている所得税から還付される形になります。
具体的に計算してみましょう。3,500万円を金利1.0%・35年で借りたケースです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 1年目の年末残高(目安) | 約3,416万円 |
| × 控除率 | 0.7% |
| 1年目の控除額 | 約23.9万円 |
| 13年間の単純合計 | 250万〜260万円ほど |
13年で250万円前後。決して小さな数字ではありません。だからこそ、この金額を上限まで受け取れるかどうかで、生涯の住居費が大きく変わります。
ただし、これはあくまで「上限に引っかからなかった場合」の数字です。実際には、次の3つの壁が待っています。

なぜ「思ったより戻らない」が起きるのか
還付額が想定より少なくなる原因は、ほぼこの3つに集約されます。
- 借入限度額の壁……住宅の省エネ性能によって、控除の対象になる残高に上限がある
- 納税額の壁……そもそも納めた税金以上には戻らない
- 手続きの壁……1年目に確定申告をしないと、そもそも受けられない
とくに①は、2024年(令和6年)入居分から制度が大きく変わったところです。省エネ基準を満たさない新築住宅は、原則として住宅ローン控除の対象外になりました。「新築なら当然使えるだろう」という感覚のままだと、いちばん危ないポイントです。
ここからは、この3つを裏返した「損しない3つのポイント」として見ていきます。

ポイント① 上限を決めるのは「借りた額」ではなく住宅の性能
もっとも誤解が多いのがここです。控除の計算に使えるローン残高には、住宅の省エネ性能ごとの上限(借入限度額)が決められています。
2026年(令和8年)に新築住宅へ入居する場合の限度額は、次のとおりです。
| 住宅の区分 | 一般世帯 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 |
|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 3,000万円 |
| 上記に当てはまらない住宅 | 原則として対象外 | |
この表を見ると、同じ3,500万円を借りても、長期優良住宅なら全額が控除の対象、省エネ基準適合住宅なら2,000万円までしか対象にならないことが分かります。1年目の控除額でいえば、約23.9万円と14万円の差です。
差は13年間積み上がりますから、住宅性能の違いだけで100万円単位の差がつくということになります。
だから確認すべきは、価格でも間取りでもなく、まず「この家はどの区分ですか」という一言です。長期優良住宅なら認定通知書、ZEH水準なら住宅省エネルギー性能証明書や建設住宅性能評価書といった書類で証明します。この書類は控除を受けるときに必ず必要になるので、契約前に「出せますか?」と聞いておいてください。
なお、2026年入居分からは床面積の要件が40㎡以上に緩和されました(合計所得金額が1,000万円を超える方は50㎡以上)。所得要件は合計所得金額2,000万円以下で変わりません。中古(既存)住宅は限度額や控除期間の扱いが新築と異なるので、購入前に個別に確認しましょう。
ちなみに、これから新築を検討する方は、実際に購入した人の声を先に読んでおくと判断が早くなります。私も物件を見る前に体験談を読み込んだ口です。新築マンション・新築一戸建ての購入者アンケート(回答者全員に5,000円)は、すでに購入した方向けですが、住宅ローンや諸費用のリアルな相場感を知るきっかけにもなります。![]()

ポイント② 戻るのは「自分が納めた税金」まで
2つ目の壁は、意外と見落とされます。住宅ローン控除は税金を減らす制度なので、もともと納めている税金より多く戻ってくることはありません。
控除の順番はこうなります。
- まずその年の所得税から差し引く
- 引ききれなかった分を翌年度の住民税から差し引く(ただし上限あり)
住民税から引ける金額には上限があり、課税総所得金額等の5%、最大でも97,500円までと決まっています。つまり「所得税+住民税で年97,500円まで」が、実質的な受け皿の大きさです。
たとえば控除額が計算上23.9万円あっても、その年の所得税が10万円しかなければ、住民税から引けるのは最大97,500円。合計で約19.7万円となり、残りは切り捨てになります。翌年に繰り越すこともできません。
だからこそ、次のような場面では注意が必要です。
- ペアローン・連帯債務……夫婦それぞれが控除を受けられるので、1人で目一杯借りるより枠を使い切りやすい
- ふるさと納税・iDeCoとの併用……先に税金を減らしすぎると、住宅ローン控除の受け皿が小さくなることがある
- 育休・時短勤務の予定……所得が下がる年は控除しきれない可能性がある
「借りられる額」ではなく「控除を使い切れる額」から逆算する。これが、宅建士・FPとしていちばんお伝えしたい考え方です。
ポイント③ 1年目は確定申告。書類は引渡しの日にそろえる
3つ目は手続きです。会社員の方でも、入居した年の翌年に一度だけ確定申告が必要になります。ここを忘れると、条件を満たしていても1円も戻りません。
必要になる主な書類はこちらです。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 金融機関の住宅ローン年末残高等証明書(毎年10月〜11月頃に届く)
- 建物・土地の登記事項証明書
- 売買契約書または工事請負契約書の写し
- 省エネ性能を証明する書類(認定通知書・住宅省エネルギー性能証明書など)
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
実務でつまずくのは、ほぼ最後の省エネ性能の証明書類です。引渡しから1年近く経ってから「あの書類はどこですか」と探し始めると、発行に時間がかかったり、担当者が異動していたりします。引渡しの日に、まとめて封筒に入れて保管するのがいちばん確実です。
2年目以降は、税務署から届く「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」と、銀行の残高証明書を勤務先に出すだけ。確定申告が必要なのは初年度だけなので、そこだけ乗り切れば大丈夫です。
なお、住宅ローン控除は繰上返済と相性が悪い場面があります。残高が減れば控除額も減るためで、金利が低いうちは「13年間は繰上返済せず手元に残す」という判断もあり得ます。ここは金利と手数料次第なので、ご自身の条件で計算してみてください。
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まとめ|住宅ローン控除は「性能・税額・書類」で決まる
2026年入居の住宅ローン控除で、損をしないための3つのポイントを振り返ります。
- 上限を決めるのは住宅の省エネ性能。長期優良・低炭素なら4,500万円、ZEH水準なら3,500万円、省エネ基準適合なら2,000万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は上乗せあり)。基準を満たさない新築は原則対象外
- 戻るのは納めた税金まで。住民税からの控除は課税総所得金額等の5%・最大97,500円が上限。借入額ではなく「使い切れる額」から逆算する
- 1年目は確定申告。省エネ性能の証明書類は引渡しの日にそろえて保管。2年目以降は年末調整でOK
住宅ローン控除は、制度を知っている人ほど得をする仕組みです。物件を決めたあとでは変えられないことが多いので、ぜひ検討の早い段階で確認してみてください。
※本記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。税制は毎年見直されるため、実際の適用にあたっては国税庁・国土交通省の最新情報、または税務署・税理士にご確認ください。
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