テキストを閉じたとたんに、さっき覚えたはずの数字が出てこない。昨日は解けた問題を今日は間違える。「私は本当に記憶力が悪いんじゃないか」——2026年の宅建試験は10月18日(日)。本番まであと8週間ほどになったこの時期、そう感じて落ち込む方はとても多いです。
先にお伝えしたいことがあります。覚えたことを忘れるのは、あなたの能力の問題ではありません。人の記憶はそもそも、覚えた直後からどんどん抜けていくようにできています(エビングハウスの忘却曲線として知られている話です)。合格した人も、同じように忘れながら受かっています。
私自身、宅建に4回落ちて、5回目でやっと合格しました。落ち続けていた頃は、忘れるたびに自分を責めていました。5回目に変えたのは勉強量ではなく、忘れることへの「考え方」です。この記事では、忘れる自分を責めずに合格へ近づくための3つの考え方をお伝えします。
忘れているのではなく、「まだ思い出す回数が足りない」だけ
落ちていた頃の私は、テキストを1ページずつていねいに読み込んで、「よし、覚えた」と思って次に進んでいました。ところが1週間後に戻ると、きれいさっぱり抜けている。そのたびに「前に進んでいない」と落ち込み、また最初から読み直す。この繰り返しで、いつまでも法令上の制限にたどり着けませんでした。
今なら分かります。あれは覚え方が悪かったのではなく、「入れる」ばかりで「思い出す」をやっていなかったのです。読んで分かった状態と、何も見ずに答えられる状態は、まったく別物です。読み込みは前者しか鍛えてくれません。
宅建は50問すべてが四肢択一で、本番では手元に何もない状態で選ばなければいけません。つまり試されるのは「知っているか」ではなく「その場で引き出せるか」です。忘れたという事実は失敗ではなく、引き出す練習がまだ足りていないというサインにすぎません。

① 「1回で覚える」をやめて、「4回目で覚える」に切り替える
まず変えたのが、覚えるまでの回数の見積もりです。以前の私は、1回読んだら覚えられるものだと思い込んでいました。だから忘れた自分にがっかりしていたわけです。
5回目の年は、最初から「1つの論点は4回目くらいでやっと定着する」と決めてから始めました。1回目は分からなくていい。2回目でうっすら思い出せればいい。3回目で半分合えば上出来。4回目で自信を持って答えられれば合格ライン。そういう前提にしただけで、忘れても落ち込まなくなりました。
やり方も変えました。読み込む時間を半分に減らし、その分をかこもん(過去問)を解く時間に回したのです。テキストは辞書のように、間違えたところだけ戻って読む。これで1周にかかる時間が短くなり、同じ2か月でも触れる回数が2倍以上になりました。回数が増えれば、忘れる前にまた出会えます。
「まだ1周目が終わっていないのに、こんな進め方でいいのか」と不安になるかもしれません。でも、ゆっくり1周するより、粗くても3周するほうが点になります。これは4年遠回りした私が、いちばん強く言いたいことです。

② 忘れた問題こそが、自分だけの「伸びしろリスト」になる
2つ目は、忘れた問題の扱い方です。以前は間違えるたびに落ち込んで、そのままページを閉じていました。5回目からは、間違えた問題こそが得点源のリストだと考えるようにしました。
具体的には、問題集の番号の横に「正」の字を書いていっただけです。間違えるたびに一画増える。3画たまった問題は、自分にとっての最重要論点ということになります。直前期に見返すのは、この字が多い問題だけです。
これが効くのは、宅建の合格ラインは近年おおむね50問中35点前後で、満点を取る必要がまったくないからです。すでに解ける問題を何度も解いても点は増えません。増えるのは、忘れた問題を思い出せるようになったときだけです。忘れた問題を見つけられたということは、その日に伸びしろを1つ見つけたということです。
それでも「やることが多すぎて、どれから手をつければいいか分からない」という方は、要点を絞ってくれる講座を直前期だけ使うのも一つの手です。私は独学で遠回りしましたが、覚える範囲を減らしてくれる仕組みにお金を払うという発想は、もっと早く持てばよかったと思っています。

③ 直前期は「新しく覚える」より「思い出す回数」を増やす
3つ目は、残り8週間の使い方です。この時期になると、まだ手をつけていない分野が気になって、新しいテキストや新しい問題集に手を伸ばしたくなります。私も毎年やっていました。そして毎年、どれも中途半端なまま本番を迎えました。
5回目の年は、直前期に新しい教材を増やさないと決めました。代わりにやったのは、すでに一度やった問題を「何も見ずに思い出す」時間を毎日つくることです。朝の10分、通勤の電車、寝る前の5分。テキストを開かずに、「37条書面に必ず書くことは何だったか」と自分に問いかけるだけです。
思い出せなければ、そこで初めてテキストを開きます。この「思い出そうとして、失敗してから確認する」という順番が、いちばん記憶に残りました。読み直しから入ると分かった気になりますが、思い出せなかった悔しさとセットで確認したことは、本当に忘れません。
忘れることを止めようとするのではなく、忘れたころにもう一度出会う。それだけで、あと8週間でも記憶は積み上がっていきます。
※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。試験日・合格基準などは執筆時点(2026年)の情報です。最新の内容は必ず公式情報でご確認ください。
まとめ|忘れる自分を責めなくていい
覚えたのにすぐ忘れてしまうあなたへ、3つの考え方をおさらいします。
- 「1回で覚える」をやめて、「4回目で覚える」に切り替える(読む時間を減らし、触れる回数を増やす)
- 忘れた問題こそが、自分だけの伸びしろリスト(間違えた回数を「正」の字で数え、直前期はそこだけ見る)
- 直前期は新しい教材を増やさず、思い出す回数を増やす(思い出そうとして失敗してから確認する)
3つに共通しているのは、忘れることを前提にして、出会う回数のほうを設計するという考え方です。忘れたことに気づけたのは、ちゃんと向き合っている証拠です。忘れていることにすら気づかないまま本番を迎えるほうが、ずっと怖い。
本番は10月18日(日)の13時から15時。あと8週間、忘れては思い出すをくり返しながら、いっしょに進んでいきましょう。応援しています。
