「駅から近くて、間取りも家賃もちょうどいい」——そんな理想の物件を見つけて、いざ引越し。でも、部屋の中ばかり見て「その土地が災害に強いかどうか」を確認しないまま契約してしまう人は、実はとても多いです。
私は宅建士として、これまで数えきれないほどの物件をお客様と一緒に見てきました。そのなかで痛感するのは、「後悔する引越しは、部屋ではなく“街”の見落としから起きる」ということです。この記事では、賃貸でも購入でも共通して、引越し前に必ず確認したい3つの災害リスクチェックを、宅建士の目線でやさしく解説します。
なぜ「街の災害リスク」を先に見るべきなのか
お部屋探しでは、どうしても家賃・間取り・駅からの距離といった「条件」に目が行きがちです。もちろん大切ですが、こうした条件は住み替えれば変えられます。一方で、その土地がもともと水につかりやすい場所かどうかは、あとから変えることができません。
実は不動産の世界でも、この「水害リスク」は年々重く扱われるようになっています。2020年8月からは、宅建業者が契約前に行う「重要事項説明」で、水害ハザードマップ上での物件の位置を説明することが義務になりました。洪水・雨水出水(内水)・高潮の3種類のハザードマップが対象です。
つまりプロの説明義務になるくらい、住まい選びで無視できないテーマだということ。ただし、説明されるのは「契約直前」です。気に入った物件が実は浸水想定エリアだった、と契約の場で知って慌てないためにも、申し込む前の自分で先に調べておくのが安心です。難しいことはありません。順番に見ていきましょう。
宅建士が引越し前に見る3つの災害リスクチェック
チェック① ハザードマップで「浸水の深さ」を確認する
まず最初にやってほしいのが、ハザードマップの確認です。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」にある「重ねるハザードマップ」を使えば、住所を入れるだけで、その場所が洪水でどのくらい浸水する想定なのかが色分けで表示されます。お住まいの市区町村のサイトでも同じものが公開されています。
見るポイントはシンプルで、「浸水の深さ」と「その建物の何階まで水が来るか」です。たとえば想定浸水が3mなら、1階だけでなく2階の途中まで水が来る可能性があります。1階の部屋やメゾネットの下階を検討しているなら、この確認は特に大切です。川や海の近くだけでなく、大雨で下水があふれる「内水氾濫」は内陸でも起こる、という点も覚えておいてください。
チェック② 土地の「成り立ち」と地名から地盤を推測する
次に見たいのが、その土地がもともとどんな場所だったかです。昔は川や池、水田だった低い土地は、水がたまりやすく地盤も弱い傾向があります。
手がかりになるのが「地名」です。「沼」「池」「川」「谷」「窪」など水に関係する漢字が入っている地名は、かつての地形を今に伝えていることがあります。もちろん例外もありますが、一つのヒントにはなります。さらに深く知りたいときは、先ほどのポータルサイトにある「明治期の低湿地」や「土地の成り立ち」の地図を重ねると、埋め立て地や旧河道(昔の川の跡)なども見えてきます。地盤が気になる購入検討の方は、地盤調査の記録もあわせて確認しておくと安心です。
チェック③ 避難所・避難経路を「雨の日・夜」に歩いて確かめる
3つ目は、いざというときの逃げ道です。地図の上だけで安心せず、一番近い避難所はどこか、そこまでの道は途中で低くなっていないかを確認しましょう。避難所までの経路にアンダーパス(掘り下げた道路)や大きな川があると、いざというとき通れないこともあります。
そして可能なら、晴れた昼間だけでなく、雨の日や夜にも一度その街を歩いてみてください。昼は静かでも夜は人通りがなく暗い、少しの雨で道路に水がたまる、といった「住んでみないと分からない顔」が見えてきます。引越しは大きな買い物ですから、この一手間が後悔を防いでくれます。
お部屋探しそのもので迷っているなら、災害リスクの相談にも乗ってくれる地域密着の店舗を頼るのも手です。私自身も引越しのたびに感じますが、その街に詳しい担当者に出会えるかどうかは大きいです。住む場所決まった?新生活のお部屋探しはアパマンショップで相談してみるのも、一歩を踏み出すきっかけになります。![]()
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まとめ|「街を選ぶ」意識で、後悔しない引越しを
引越しで本当に見るべきは、部屋の中だけではありません。最後にもう一度、3つのチェックをおさらいします。
- ①ハザードマップで浸水の深さと、建物の何階まで水が来るかを確認する
- ②地名や古い地図から、土地の成り立ちと地盤を推測する
- ③避難所と避難経路を、雨の日・夜に自分の足で歩いて確かめる
どれも特別な道具はいりません。スマホと、少しの下見の時間があれば今日から始められます。部屋の条件だけでなく「この街で安心して暮らせるか」という目を持つだけで、あなたの引越しはぐっと失敗しにくくなります。新しい生活が、安心とともに始まりますように。

